はじめに
「介護福祉士」は、介護の業務に携わった経験がある方であれば1度は耳にしたことがある資格名でしょう。
介護職にもさまざまな資格がありますが、中でも唯一の国家資格とされているのが「介護福祉士」。
とは言え、介護に関する資格の種類は多岐に渡ります。そのため「介護福祉士ってどんな資格なの?」「ヘルパーとは違うの?」と疑問を持たれている方も多いのではないでしょうか。
今回は介護福祉士の資格に関して、業務内容や資格を取るメリット等、具体的にお伝えしていきます。
介護福祉士とはどんな資格?
介護福祉士は、介護職の中でも唯一の国家資格。1987年に制定され、社会福祉及び介護福祉法によって定められている資格です。(参考:http://www.jaccw.or.jp/fukushishi/index.php)
介護の現場では、この国家資格を取得した人のことを「介護福祉士」と呼んでいます。
平成23年度 厚生労働白書を参照すると、介護福祉士について
「介護福祉士の名称を用いて、専門的知識及び技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者である」
このように表記されています。(引用元:https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/11-2/kousei-data/PDF/23010806.pdf)
わかりやすくお伝えすると、
・高齢者や障がいなどにより介護を必要とする方達が、快適に生活することができるように、専門的な知識を用いて、日常生活の介助を行う
・介護を必要としている方達と、介護を行う方達からの相談に乗ってサポートや指導を行う
上記のような業務を行うことができるのが「介護福祉士」です。また、介護業界では介護福祉士のことを「ケアワーカー」と呼ぶこともあります。
介護福祉士の資格は介護業界において「キャリアパスの最上位資格」ともされており、取得の難易度は少し高めであるといわれています。
ヘルパーと介護福祉士の違いは?
ヘルパーという言葉も介護の現場ではよく耳にするワードですよね。
ヘルパーは基本的に、「介護職員さん」や「ヘルパーさん」といった呼ばれ方をすることが多でしょう。
基本的にはヘルパーも、介護福祉士と同じように「介護を必要とする方達の家事や日常生活上の介助」を行います。しかし介護福祉士と違って、ヘルパーに資格の有無は関係しません。
それに対して、介護福祉士は国家資格を有しています。
先ほども介護福祉士の業務内容には「指導」も含まれているとお伝えしました。地齋の現場でも介護福祉士は、他の介護者やヘルパーに対する指導を行ったり、現場責任者となったりする場合も多くあります。
業務内容の違い以外にも、介護福祉士とヘルパーでは雇用面や待遇面に違いが出ることもあるでしょう。
先述したように介護福祉士は、資格を持っていない介護職員と比べると業務の幅が広くなります。そういった要因もあるためか、介護福祉士の資格を持っていると正社員での雇用もされやすい傾向にあります。
さらに施設や企業によっては、介護福祉士の国家資格を持っている人に対しての「資格手当」が支給されることが多いでしょう。
国家資格保持者というだけあって、いろいろな場面で介護福祉士が優遇されることもあるのが事実です。
介護福祉士の業務内容
先ほども少しお伝えしましたが、介護福祉士になると、できる業務の幅が広がります。
基本的には、ヘルパー・介護職員と同じように「介護業」を行います。それに加えて介護福祉士は、「スタッフのマネジメント」や「助言・指導」などの重要な役割も担います。
それでは、具体的な仕事内容についてお伝えしていきます。
3-1.身体の介助
介護が必要な方達の個々の状況に合わせて、食事や排泄、入浴、移動などの「身体に直接接触しての介助」を行います。
3-2.生活の援助
身体介助のみならず、家事全般の援助も行います。
具体的には、掃除や洗濯・荷物やお部屋の片づけ・買い物から食事の用意まで多岐に渡ります。
3-3.レクリエーション
レクリエーションを行うことにより、介護を必要とする方達の「身体機能の回復や維持」を目指したり、精神的なケアに繋げたりします。
介護を必要とする方それぞれの状況に合わせて、歌を歌う・体操する・工作などを行うなどのレクリエーションをすることがあります。
3-4.相談や助言
直接的な介護を行うことだけではなく、要介護者の家族への指導や助言を行います。
専門知識を用いて、福祉用具の使用方法や自宅で介護する際に注意すべきことなどの指導を行うこともあります。
3-5.スタッフのマネジメント
介護現場でのリーダーや責任者となり、スタッフのマネジメント・教育を行うことも仕事の1つです。
介護福祉士の資格を取るメリット
介護福祉士の資格を取得することで得られるメリットは多くあります。
誰でも簡単に取得できる資格ではりませんが、介護業界で唯一の国家資格というだけあって「一生モノ」になる資格といえるでしょう。
介護の現場でキャリアアップを目指す方にとっては、介護福祉士の資格は非常に大きな強みとなります。
では、具体的にどんなメリットがあるのかについて見ていきましょう。
4-1.できる仕事が増える
介護の現場では、介護福祉士の資格を持っている方のみが就くことができるポジションが多くあります。
具体例をご紹介しましょう。
訪問介護を行う事業所には「サービス提供責任者」という役割が存在し、通称「サ責」と呼ばれています。
サービス提供責任者は、訪問介護で提供するサービスの責任者のことをいいます。
ケアマネージャーやヘルバーの管理や指導を行うほか、提供する介護サービスの計画なども行います。計画することはもちろんですが、その計画に基づいたサービスを確実に提供できるように、他のスタッフとの連携や業務の調整を行います。
「サービス提供責任者」になるためには、介護福祉士・実務者研修修了者・ホームヘルパー1級過程修了者のいずれかの要件を満たしている必要があります。(参考:https://job-medley.com/tips/detail/831/#i4)訪問介護事業所においては、介護福祉士を持っていることで、「サービス提供責任者」を目指すことも可能になるのです。
また、介護福祉士の資格を持つ人は、介護施設などに配置されている「生活相談員」にもなることができます。この生活相談員になるためには、「社会福祉士・社会福祉主事任用資格・精神保健福祉士」のいずれかの資格が必要です。
このように役職を持つことが期待できるのも大きなメリットの1つといえるでしょう。
そのほかにも介護を提供する際に、チームで連携して介護を行うことは多くあります。こういった場面では、介護福祉士の資格を持つ人がチームリーダーに抜擢されるなどの可能性も高くなります。
このように、「組織やチームのリーダー的存在として活躍できる可能性が高い」という点は、介護福祉士の資格をもつメリットといえるでしょう。
4-2.社会的・職業的信頼を得ることができる
介護福祉士の資格を保有していることで、介護を受ける方達からの信頼を得やすくなる点も、メリットといえるでしょう。
介護福祉士は国家資格であり、「介護における専門性」を理解していることをアピールすることができます。
要介護者やその家族にとっても、「国家資格保有者」からサービスを受けているという事実は大きな安心感につながるでしょう。要介護者や家族の安心感や満足感を得ることができれば、職場にとっても非常に大きな強みとなりますね。
職場においては、スタッフのリーダー的存在として活躍してくれる介護福祉士がいれば、その事業所が提供するサービスがより充実したものにもなり得ます。
職場内で信頼されやすいという点も、介護福祉士の資格を持つメリットといえそうですね。
4-3.転職の際に有利になる
介護福祉士の資格を持っていると、転職や就職活動において圧倒的に有利になります。
元々人手不足と言われている介護業界では、経験不問・無資格者の応募をOKとしている企業も多く存在します。
ですが介護福祉士の資格を持っていれば、「すぐに現場で力を発揮してくれる」という期待もされることでしょう。そのため、求人に「社会福祉士の資格保持者優遇」という旨の内容が記載されていることも多くあります。
さらに、国家資格である介護福祉士は一生モノ。日本中どこに居ても使うことができる資格であるため、場所を問わず転職活動がしやすくなるといえます。
介護福祉士になるには?
では実際に介護福祉士になるには、どのような手順を踏む必要があるのでしょうか。
社会福祉士国家試験は、介護経験が無い全ての人にも初めから「受験資格」があるわけではありません。
介護福祉士になるには大きく分けて4つのルートがあるため、それらについて1つずつご紹介していきます。
養成施設ルート
こちらのルートは最短で1年と、比較的早く受験資格を取得することができます。
2017年実施の試験までは、
指定された介護福祉養成施設の卒業により介護福祉資格の取得が可能なルートとされていました。
しかし「社会福祉及び介護福祉法」が一部改訂されたことにより、
翌年の2018年1月に実施された試験からは「指定された介護福祉養成施設を卒業し、試験を受験することで資格の取得を目指す」というルートに変更されました。
(参考:https://www.acpa-main.org/kaigofukushishi/route3.html)
2017年度から2021年度に卒業した方は、5年間のうちは介護福祉士の資格を与えられます。
しかし継続して介護福祉士の資格を持つためには、5年の間に試験を受験して合格する・もしくは5年連続で介護実務の仕事に従事していることが必須となります。(参考:https://job-medley.com/tips/detail/914/#i3)
2022年度以降の卒業者は、指定の介護福祉養成施設を卒業したのちに、国家資格を受験して合格することが必要になります。
実務経験ルート
実務経験ルートは、介護業務に従事しながら国家試験を受験するルートです。
多くの方がこのルートで社会福祉士の資格を取得しており、比較的メジャーな受験方法といえるでしょう。
実務経験ルートから介護福祉士を取得するためには、現場での実務経験が3年以上必要とされています。さらに介護員実務者研修の資格を取得していることが条件に挙げられます。
これから資格を取得する場合、働きながら上記の2つの段階を踏む必要があり、最低でも3年の年数が必要になります。他のルートに比べて、費用面での負担は少なく済む点がメリットといえるでしょう。
福祉系高校ルート
福祉系高校ルートは、福祉系の高等学校もしくは福祉系特例高等学校を卒業し、国家試験を受験する方法です。
「福祉系高校」に平成21年度(2009年)以降に入学した人であれば、卒業後に「筆記試験」に合格することで介護福祉士を取得することができます。
それ以前に入学した人は、学校の卒業後に筆記試験と実技試験に合格する必要があります。ただし介護技術講習を受講している人においては、実技試験が免除されることになっています。
「福祉系特例高等学校」に平成21年度以降に入学した人であれば、学校卒業後に現場での実務経験を9か月以上積み、そのうえで筆記・実技両方の試験に合格する必要があります。
またこちらも、介護技術講習を受講している人においては、実技試験が免除されることになっています。
(参考:https://www.acpa-main.org/kaigofukushishi/route2.html)
経済連携協定(EPA)ルート
経済連携協定ルートにおいては、「EPA介護福祉候補者」と呼ばれる人達が介護福祉士を目指すルートです。
「EPA介護福祉候補者」は聞きなれない言葉かもしれませんね。
簡単に言うと、日本における受け入れ施設の中で「介護福祉士を目指して仕事に就いているインドネシア人・フィリピン人・ベトナム人」をEPA介護福祉候補者といいます。
介護施設において3年以上の実務と研修を行って、国家試験を受験する必要があります。(参考:https://job-medley.com/tips/detail/914/#i3)
まとめ
介護福祉士は、専門的な知識と安心できる技術を持ち、現場でもリーダー的存在として活躍することのできる存在です。
介護福祉士の資格は、簡単に取得することのできるものではありません。
ですが人手不足が深刻化してきている介護の現場において、介護福祉士の専門性や信頼性は多くの場面で必要とされています。
そして何より、介護の現場でキャリアアップを目指す場合は、介護福祉士の資格を取得することは大きな「強み」になるといえるでしょう。
現在転職中の方においても、介護業界で高みを目指していきたいという方は、「介護福祉士の資格取得を視野に入れた転職活動」を行ってみるのも良いかもしれませんね。